しばイッヌの日々

いち平民のライフログです。ひととなり詳細については『自己確認』をご参照ください。

日常系

『クリスマス・レター』※再録

クリスマスイブの午後、少年のもとへ、一通の手紙が届いた。賑やかな配色の、クリスマスカードとともに。 「親愛なるわが息子へ この手紙が届く頃、パパの部隊は束の間の休息を約束されていると思います。 手紙を書きながら見上げている星空は、君の居る空へ…

「メメント・モリ」(再録)

あの時私は何故、彼を止められなかったのか。 四半世紀の時を越えて尚、苦い思い出がじわりじわりと、胸の奥で燻り続けていた。 しかし未だに答えは出ない。 あの時彼に、何と言う言葉を返せばよかったのかを。 上手い事を言えば言うだけ、言葉は思いからど…

第十四文「周知の事実だった件について」(移稿・ここまで)

結局、そのあと小一時間粘って待ってはみたが、着信の気配すらなかったので、さすがに二人してカフェを出ることにした。 夕方解散するまで、同じビルのテナントをぶらぶら見て回ったりした間も、何事もなく時間だけが過ぎ去った。 「まぁ、ねぇ・・・知り合…

第十三文「残念なお知らせです」

「お。今度は繋がりそうよ覚悟おし♪」 [電話に出られません]を三回ほど流し聞き、ようやく持ち主が応対したらしい。ケータイを手渡される。 サキコは期待でニヤニヤしているんだが、私は緊張で汗が出始めているよ。 ―一人の気も知らんで、能天気なやつめええ…

第十二文「待ち人来たらず・・・強硬手段☆」(移稿)

それから30分以上、二人でぼんやりと待っていたのだが・・・彼の人と思しき人物が現れる気配はなかった。 「・・・・・・来ないねー」 すっかり空っぽになったドリンクの容器をもてあます。 「んー・・・」 サキコはというと、先ほどからケータイをいじって…

第十一文「勝手な待ち合わせ」(移稿)

「うわー!ほんと広いねー!こっちの駅で降りることはあっても、本屋って用事無いから寄った事なかったもんねー」 ものめずらしげに全体を見渡し、サキコが感嘆の声を上げた。 「で、例の彼のショップは何処よ?」 「レジの右奥」 「オッケー!いこいこ♪」 …

第十文「思惑、それぞれ(サトシの場合)」(移稿)

―ったく、ユキヒロはほんっとに、単純というか、純粋というか・・・まっ、そこがこいつのいいところなんだけどさ。 ストレートのアイスティーをちびりちびり飲みながら、サトシは思っていた。 二人が知り合ったのは大学に来てからだが、サトシの方は、ユキヒ…

第九文「思惑、それぞれ」(移稿)

今日の講義を終え、僕は大学の友人と近くのレストランで昼食を摂っていた。 「んー・・・なんつーか、軽いナンパだと思われたんじゃね?」 「・・・やっぱり、そうなのかなぁ・・・」 携帯の着信履歴を再び辿ってみるが、結果は同じ。ほぼ、見知った友人たち…

第八文「ナシったら、ナシなんです」(移稿)

「ナシだよ、ナシ。ナンパと一目ぼれはありえないね」 弁当のおかずであるタマゴヤキを飲み下すと、そう言い切った。 「出会いの一つのきっかけだって思えばいいじゃん!そんなだからアンタ未だにまったく男っ気ないのよー!」 向かいに座る同僚、サキコが、…

第七文「要らないメモ」(移稿)

ていうか。 カフェの店員にバッチリ覚えられるくらい通っていたって事だな、私。 しかもそれだけ通っていて、店員の事どころか、店名すら記憶にないってどんだけ社会に興味ないんだろう。そう考えると、ちょっと恥ずかしくなってきた。 ほどよくぬるくなって…

第六文「微妙な再会2」(移稿)

逆に真夏の炎天下も遠慮したいが。 ―しかしあんまり無気持ちいい陽気だと、まったり寛ぐを通り越して爆睡しそうだな・・・ 「わー・・・ここって見晴らしいいんだなぁ!向こうのビルより二階分フロアが高いだけなのに、景色違うなぁ・・・」 がたん、と隣に…

第五文「微妙な再会1」(移稿)

―あったまるなあ。 新作ベリーのラテをすすりながら、ふうう、と息を吐いた。 暦の上では春なんだけど、まだまだ3月は風が冷たくて肌寒い。 マフラーも手袋も手放せない。 ―ここの景色も、そんな悪くは無いんだけども。ああ、夜になったら、夜景を楽しむのに…

第四文「変化」(移稿)

また、僕自身も本が好きだと言うのもあり、同じ類の人を見つけると嬉しくなって、それだけでも親近感が沸く。書店にあるカフェにバイトを決めたのも、それが主な理由だ。 ここならば、帰りに幾つか物色してすぐに買えるし、書店の店員さんたちと親しくなれば…

第三文「きっかけ」(移稿)

試験休みに入って最初のバイトの日、店長さんからしばらくの間だけ、土日の昼の数時間だけヘルプで入ってほしいと頼まれた。もちろん、その分平日に代休がもらえるという条件で。 特に予定も無かったし、夏休みの間に稼げるだけ稼いでおけるチャンスだとも思…

第二文「面白くない男ですみません」(移稿)

ふぅぅぅぅぅ・・・。 今日何度目かの、深い溜息を吐いた。 視線を上げてカウンター越しに見つめるいつもの席に、やはり彼女の姿は無かった。 「・・・はぁ・・・」 「体調悪いの?」 うっかり声に出してしまった所為で、背後から店長さんがそう声を掛けてき…

「星空見上げて」(番外後編)(移稿)

そんな心配をしていると、電話が鳴った。 「ハルカ電話よー!部屋に切り替えようかー?」 「んー、おねがいしますー」 自室に電話を引き込んでいて良かったな。 しかし若干アナログタイプなのが面倒なのだけれども。 受話器をとり、再び叫ぶ。 「いいよー、…

フェーン現象・・・だと?!

台風の置き土産で、気温がぐんぐん上がっているんですが、夕立はどんなに待っても来ないそうです。 それどころか、乾燥注意報まで出はじめました。 フェーン現象・・・恐ろしい子!! おかげで朝晩は涼しくなりましたけどね! 今日からペルセウス座流星群とかなん…

「星空見上げて」(番外前編・移稿)

こないだは、皆既月食だったか。 週間天気予報で一週間雪マークがちらほらしていたので半ば諦めていたのだが、予定時刻になると、うっすら雲が晴れてきて、断続的だが見届けることが出来た。 今晩は、なんとか流星群が大量投下されるという。 ふたご座だった…

第一文「つまらない女ですけど、何か?」(移稿)

どこにでもいる普通の・・・よりは、まぁ、多少地味めではあるかもしれない、小社の事務職。 ああでも、経理とか総務なんて、かっこいい仕事じゃないな。 庶務・・・ね。まぁ、そんなところだね。 週末のささやかな楽しみはといえば。 小洒落たカフェで文庫…