昼下がり。
ぼんやりとした意識のままで、公園をふらふらとしていた僕の足元に、やわらかいものがぶつかってきた。
ように、感じた、というほうが正しいだろうか。
それくらい、僕の心はこの場所に無かったのだった。
「あ・・・すみませんっ」
鈴音のような声が、そんな僕にも何故か響き、途端に世界を取り戻す。
直ちに駆け寄ってきた少女が眼下で拾い上げたものは、淡いピンク色の毛玉で。
辿る糸の先は、ベンチの上に置かれている、編みかけていたと思しきものにつながっていた。
少女の言葉に何の返答もせず、ただただじっとその所作を見ていただけの僕を、訝しげに思う様子を見せないばかりか、彼女は予想外の行動に出た。
にっこりと、僕を見上げて微笑んできたのだ。
「!!」
木漏れ日のようなやわらかなその笑顔に、僕は完全なる不意打ちを食らってしまった。