しばイッヌの日々

いち平民のライフログです。ひととなり詳細については『自己確認』をご参照ください。

「ようかいのせいだ!」(前編・移稿)

「ねぇ、パパ。最近あの子ったらね」

 夕食をほおばっている夫に向かって、ふぅ、と大げさにため息をついてみせると、小学校に上がったばかりの一人息子の愚痴をこぼし始めた。

「どうかしたのかい?」

「パパがこの前買ってあげたゲームがあるでしょ?あれにものすっごく、今夢中でね」

「喜んで遊んでくれてるなら、いいことじゃないか。ああ、夜更かししたり、言うこと聞かなかったりして、君の手を煩わせているとか?」

「夜更かしはしないんだけど、ちょっと困ってることがあるの」

 ママの話によれば、気に入らないこと、やりたくないこと、嫌いな食べ物があるとすぐに、ある言葉を決まって口にするのだという。


「僕が悪いんじゃないもんっ。全部妖怪のせいなんだもんっ」

そう言って、逃げたり投げ出したりするのだそうだ。

「ふぅむ、そうか。それはちょっと、困ったなぁ・・・。よし、今度僕のほうから、よく言って聞かせてみるよ」

「ええ。お願いするわ。普段あまり怒らないパパから言ってもらえると、あの子にも効くんじゃないかって思うのよ」




 しかし、この度は余程、この台詞が気に入っているのか、息子もなかなか引かなかった。


「言うこと聞かないのは、僕じゃなくて、妖怪のせいなんだよっ!」


 これが世に言う、反抗期の始まりなのかと、若い夫婦はほとほと困ってしまった。


「反抗期は自立への第一歩って言うからね・・・少し、様子を見てみようか」

「そうね・・・ちょっと大変だけど・・・学校では、お友達と仲良くしているみたいだし・・・特に、先生からも何もお咎めはないようだし。明日、ママ会があるから、知り合いのママさんにもいろいろ聞いてみるわね」


 そうしてこの案件は、少しの間保留ということになった。




 ところが。


 この一連の出来事を、快く思っていないものたちがいたのだった。

(続く)