しばイッヌの日々

いち平民のライフログです。ひととなり詳細については『自己確認』をご参照ください。

第十二文「枯渇」(移稿)

「枯れてしまったのだ」

彼は、遠くへ視線を投げたまま、そう言った。

「いや、枯らしてしまったのだと思う。我々が・・・」

 

生物の存在意義は、それらの持つ「遺伝子」の名の通り、「伝え遺すこと」だという。

次の世代へ伝え遺すこと。

それには、エネルギーが必要だ。

単純な構造の生物や、お粗末な文明(とはおおよそ呼べないレベルの単為生殖の繰り返しを含めて)の場合は、必要とされるエネルギーもさしたるものではない。


従って、当然のことながら。


構造の複雑化した生物や、それらが積み上げ作り上げてきた文明を遺し伝えることには、それ相応にエネルギーが必要なのだ。

 

「我々の世代では、惑星ひとつを消失するまでに至りました」


そして。


「この先もし我々自身、及び我々の文化文明が進化し続けるとしたら・・・」

 

 

どれくらいの犠牲が必要なのだろうか。


彼は言葉を呑んだ。


言わなくても察するに余りあると判断したのだろう。