しばイッヌの日々

いち平民のライフログです。ひととなり詳細については『自己確認』をご参照ください。

第十三文「審判は下された」(移稿・ここまで)

選んだのは確かに、マザー・システムと呼ばれるデータ集積回路だった。

『多大なる生産は、多大なる消費を生みます。それは残りわずかなエネルギー資源の浪費に他ならないのです』

そこで、マザー・システムは、ひとつの選択をした。


優秀なるデータのいくつかだけを保管して、必要に応じて生産する。


それは、自動制御に限界を持つシステムの、手動な管理をサポートする要員である。

 

『すなわち、実質的な主従関係の逆転がここから始まったのです』


コンピュータたちが、人類に仇成す事はない。

彼らの存在なくしては、マザー以下、あらゆるシステムに何れ支障をきたし、崩壊してしまうからだ。何より。


『私たちは、そもそも人間によって作り出されたものです。人間や、それに関わるものに対して、常に有益になるようにと、データを集積し活用するのが私たちの役割なのです。それ以外の目的はありません』


学習機能を活用してデータ収集を図るための知的欲求はあるが、それはけして、私利私欲ではない。ここが生物とコンピュータとの違いなのだろう。

 

 


ということは。

 

『人類は自らの手で、実に巧妙に、その役目から離脱したのです』

 

それは、誰かが意図的に遺伝情報データを、ある一定の年齢で消えてしまうように仕組んだのか?

 

『それは、何とも言えません。何故なら、私や、ネットワーク下にある全てのコンピュータシステムから、その痕跡が見つけられなかったのです』


だとしたら。


『参考までに申し上げますが、我々の保管しているデータは、完成形の遺伝子設計図しかありません』


どういうことだろうか。

 

『完成した・・・成人に達した肉体の進化は、その個々に委ねられるのです』


それが意味することとは。


『人類自らが、彼らの存在の意味するところへ、審判を下したのです』