約束の場所へ。
彼女は、ついに来ることはなかった。
何故ならば。
あの朝、突然にやって来た、見知らぬ少年に。
跡形もなく、連れて行かれてしまったから。
『あなたの、せいよ』
すべての意識が繋がったとき、最初に、彼女が発したメッセージだったそれは、時折。
何かの拍子に、不意に、信号のひとつとして流れ込んでくる。
紛れ込むというよりは、明確な意思表示のように思えた。
『あなたのせいなのよ、なにもかも。あなたさえ、来なければ』
約束の時間に、間に合ったのに、と。
受信するたび、責め立てられた。
しかし、うすうすは彼女も、気付いているのかもしれない。
彼が繋がるのは、膨大な情報ネットワーク、のようなものだから。
この星のすべてと、そして。
彼の存在する意味、この星を目指し降り立った使命も、すべてが。
繋がった瞬間に、彼女にも流れ込むのだから。
記録と、記憶と。
それでも。
怒り悲しみ苦しみの、やり場がないのだ。
ぶつけるところがないのだ。
だから。
今は、彼がそのすべてを、受け止めるしかないのだ。
やがて、この星が終わり、融けて。
ひとつになる、そのときまで。