しばイッヌの日々

いち平民のライフログです。ひととなり詳細については『自己確認』をご参照ください。

「笛吹き男と、踊る老人」(再録)

かつてこの街は、異常発生した害獣に悩まされていた。

食料を食い荒らされるのはもとより、運んでくる伝染病は、ともすれば老人や子供などの弱者にとっては、死に至る恐ろしい弊害だった。

そこへある時、謎の笛吹き男が現れる。

彼は害獣を退治する代わりとして、法外な報酬を要求してきた。

街のお偉方は、こんなみすぼらしいおかしな男一人で何もできるはずは無いとたかをくくって、二つ返事で要求を呑んだ。


しかし、彼はいとも簡単に、害獣たちを駆逐して見せる。

 

街の人々は大喜びだが、お偉方は、約束の件があり、新たな問題に頭を抱えた。

 

そうして出した結論は。


「あれは、お前の自作自演だろう。このインチキ野郎め」


言いがかりをつけ、報酬を払うどころか、男を村から追い立てた。


そののち、ある夜、街に笛の音が響き渡った。


聞き覚えのある、しかし、メロディラインは違った。

 

翌朝、街から子供たちの姿が消えた。


大人たちは嘆き悲しみ後悔したが、時既に遅かった。


さらに、半世紀のときが流れ。

再び、あの笛の音が町に響いた。

たまたま宿を求め民家に泊まっていた旅人が、不思議に思ってそっと窓から外をのぞいてみると。

 

年老いた人々が、月明かりの中列になって、踊りながら歩く姿があった。

 

その日を境に、街から人々の姿が消えた。