しばいヌの地下吠え(狩)

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「発端」(地球未来編)(再録)

突如として、地球は謎の宇宙船団から無差別攻撃を受け、危機的状況となっていた。

 

先進各国の精鋭たちが、英知を尽くして極秘に進めてきたという、最先端のあらゆる手段を講じても、一向に歯が立たなかった。

 

もはや地球人類の滅亡も目前と、みなが諦観の境地に行き着いている中、ひとつの小さな地下施設で、身を寄せてなにかの話し合いがなされていた。


「先生、これですべてを解決できるのでしょうか」

「確実とは言い切れないが、何がしかの問題解決の糸口を見つけられると思うのだ。やってくれるかね?」

先生と呼ばれた初老の男はそう言いながら、端末機のキーを休みなく打ち続けていた。
そのとき。


ゴウン、という鈍い衝撃音とともに部屋全体が揺れた。


「もはや一刻の猶予もないようだ。私はここで、最後のメッセージを送ることにする。君は今すぐあの機体に乗り込み、発進の準備をして待っていなさい。メッセージ送信の10分後に、自動射出される手はずになっている。さあ、もう行きなさい」


若い男は少し迷いを見せたが、やがて意を決したように表情を引き締めると、後方のドアを開けて駆け出していった。

 

彼は足音の遠くなるのを確認すると、再びキーボードをたたき始める。


それは、独自に解析したらしい、宇宙船団を操っていると思われるものたちのコミュニケーション信号を使った、あるメッセージの送信だった。


『宇宙よりの訪問者に告ぐ。これは最終警告となる。これまで幾度となく停戦交渉を内容としたメッセージを送信したと思う。返信が一切ないということが何を意味するのか、現時点では判断しかねるが、残念なことに、我々には時間がない。やむを得ず、最終手段を実行することにした。』

一旦送信し、電波状況を確認した後再び続きを打ち込み始める。


『あなた方のコンピュータにハッキングし、航行データから始発拠点となる星系を割り出して特定に成功した。そしてそこへ、一台の破壊兵器を送り込んだ。』

送信と同時に、彼はひとつのスイッチを入れた。

『さらにもうひとつ、いいことを教えよう。この惑星も、まもなく終わる』

またひとつ、スイッチが入る。

『規模の大きすぎるあなた方の船団すべてを破壊するためには、惑星ひとつ分くらいのエネルギーは必要だろう?』

最後のスイッチが入れられた。


直ちに、飛来していた船団の全ては、見えない鎖につながれたように、その場から身動きが取れなくなった。

さらには、揚力すら失ったのか、次々と大地に叩きつけられるように落下し始めた。

至るところで起きる爆発。

彼のいる研究室も、身を起こしていることが困難になるほどに大きく、崩壊を始めていた。

 

「戻る場所は用意できなかった。すまない」

 

瓦礫が積もりうずもれていく中で、コンピュータが何かの信号を受信していたが、誰もそれを聞くものはいなくなっていた。

 

 『・・・そうか。当初の目的とは異なる結末だが、これで負の連鎖を終わらせることはできそうだ・・・』

 

 『・・・貴殿の送り込んだ兵器とやらは、今頃時空の狭間でさまよっているのではないかな?何故なら・・・』

 

 『・・・貴殿たちの科学文明レベルでは、時間の壁を突破できないと見た。万に一つ、機体がその試練を潜り抜けたどり着けたとしても・・・』

 

 『・・・果たして中身は無事だろうか?・・・』

 

含んだ笑い声のようなものが、ノイズの奥で聞こえたような気がした。